DCC機器にアナログ(DC)対応は必要か

「弊社のDCC機器でアナログ対応をする必要はあるか?」という問いに置き換えると、弊社のジャッジはNOです。

DCC機器にアナログ(DC)対応機能は、2022年時点で不要という判断を持っています。なお、DC対応は不要と判断してますが、DSair2のようにPWM出力機能を有する、DC対応機器もあります。あくまでも簡易的なものであって、未来永劫サポートを続けるということではありません。実験的に搭載をし、たまに様子を見ていると理解いただけると幸いです。

なお、競合メーカーではDC対応の製品を出しているケースが多くあります。LokSoundやその他のメーカーでも、制限は多いですがピュアDCのアナログパワーパックであれば動かせたりします(PWMパワーパックで動かないメーカーはたくさんあります)。その中で、弊社がDC対応が不要という理由を述べていきます。その理由は、使い勝手の悪さ、機能の制約、コストの3点が要因です。

  1. DCモードでは正常に動かないケースが多い。
  2. DCモードでは一部の機能しか動かすことができない。
  3. DCモード対応のコスト負担

以下に、項目別の理由を述べます。

①DCモードでは正常に動かないケースが多い

アナログパワーパックには、PWMパワーパックから旧来のトランス式、トランジスタ式等、仕様が様々です。技術的な課題があることから、DC対応のデコーダの多くは、PWMパワーパックをサポートしていません。しかし、日本国内のパワーパックは、常点灯機能の普及により、PWMパワーパックが主流となっています。つまり、DCC車両をDCモードで動かすことが難しいケースが増えているのが実情です。

動かないだけなら良いですが、スロットルを最大に設定してしまうと、突然走り出す現象があります。これは、ピュアDCしか認識しないDC対応デコーダは、最大電圧の時はPWMパルスはほぼ出力されず、最大電圧の直流電圧が流れるため、最高速度で走るように命令が来ていると誤認識するためです。PWMパワーパックの出力電圧を検出する難しさの所以です。

つまり、DCモードは、正常に動かないばかりか、誤作動していると誤認されるケースもあり、DCCに対するネガティブ思考を増長していることに繋がっていると判断しています。PWMパワーパックを使うと、DCC車両が壊れるという都市伝説が、まさにDC対応を中途半端に進めたことによる結果でしょう。DC対応していなければ、何をしても微動だにせず、動かないだけで済むわけです。

② DCモードでは、一部の機能しか動かすことができない

DCモードでは、アナログのパワーパックのインターフェースをそのまま使いますので、進行方向の切り替えとスピードの設定しかできません。スピードも、実は7V以上無いとデコーダの内部電源が起動しないので、スロットルを半分近くまで上げておかないと微動だにしません。この時点で、使いずらいなと思われることでしょう。

また当然、コマンドを送ることができないので、ファンクション操作を行うことができません。DCCサウンドや、ライトなどのギミックはファンクション操作によって実現することがほとんどであるため、走行音だけやヘッドライト・テールライトだけ動いても、多額のコスト・手間をかけた分のパフォーマンスを全く出し切れません。なお、FWDとREVを一時的に切り替えて警笛を鳴らす等の機能のあるデコーダもあるようです。

果たして、この中途半端な動きで、「DCCは楽しいよ」と言えるでしょうか。「操作が面倒そうだな」とか「アナログで十分だな」とか「サウンドボックスがあるじゃない」などの本末転倒な話になるのではないでしょうか。

オープンサウンドデータで、DC対応していてアナログ環境でも楽しめることを数年間に説明したことがありますが、その後、結局、有効に活用されてDCC普及に役立ったという報告はゼロです。中途半端な魅力は、魅力ではないという当然の結果であると言えるでしょう。DCCの機能はDCC環境で発揮されるので、DCCの良さは、DCC環境で示す必要があることを結論付けた結果となりました。

③コスト負担

本来、DCC機器はDCCのために作られたもので、DCモードで動かすことが主の目的ではありません。主の目的でないものを正常に動かすことの労力は誰がコスト負担するのでしょうか。

DCモード対応は、当然、開発コスト・部品コスト・サポートコストに影響します。アナログ判別の回路が追加となり、そのコストはアナログモードで使用しているときのみしか償却できません。①と②で述べた通り、ある特定の条件下でしか使用しませんが、そのコストは負担しなければなりません。100%近い利用者がDCCモードで使用する以上、そのコスト負担は受け入れられないのではないでしょうか。

しかし、DCCは多くのメーカーが参入できる自由市場です。様々なメーカーが既に存在します。競合メーカーの既存機器で、DC対応のものが市販されていますので、そちらを使えばよいのであって、DesktopStationがそこに、あえてコスト負担をして対応する必要性というのは、無いと判断しています。

もちろん、コスト負担するべきという考えのDCCメーカーがいることは否定しません。自由競争ですので、その意見の違いは開発コスト負担の有無、最終製品価格の差異となり、結果として市場での売り上げやシェアで差異が出てくるものとなります。

弊社の意見を書かせていただきましたが、様々な意見があることは承知の上です。ただし、弊社の考えである以上、皆様の意見が反映されないケースがあることはご承知おきください。

逆に、違う会社では「両対応すべき」というコンセプトを持っている場合もあるはずです。この場合、弊社の意見は取り入れられないわけです。これは意見や方向性の違いであり、結果として別製品が出てくるだけでありますので、自由市場である以上、全く問題のないことです。

私の個人的考えでありますが、全ての意見を集約したもの(鉄道模型に限らず)は、中途半端なものに仕上がりますので製品として成り立ちません。メロン、スイカ、イチゴ、バナナ、ぶどう、梨・リンゴなどなど、美味しい果物を全部集めてミックスジュースにしたら美味しいですか?ミックスジュースを作るとき、必ず法則性やNGな条件がありますよね?多数の意見がくれば、製品の方向性や色を明確化するために、集約や検討の過程で誰かの意見は必ず捨てることになります。それは製品のコンセプトや戦略と差異があったので、ある1つの決めごとについては採用されなかったのであって、その意見そのものを否定したわけではありません。最終的な結果として、その意見は正しい場合があるかもしれません。ただし、意見の反映先が違っていれば、採用されるかしないかは、実行に移す人たちで決められることになります。もし、納得できなければ、人・モノ・金を用意し、自分で実行してしまえばいいのです。実行できないのなら、そこは納得していただくしかありません。

コメント

  1. にこまつ より:

    DCCデコーダーを無理にアナログPWM制御可能にするのは技術的、コスト的に無理がありそうですね。
    デコーダーをアナログ対応にするより、いっその事Next18,MTC21のアナログ基板を用意しては如何でしょうか?
    かといって、言い出しっぺの私は多分買いませんけど(笑)

    商売的には将来性は期待できそうなんですよ。
    DCC対応基板のOEM供給の可能性も視野に入れられるんじゃないかと。

    Next18,MTC21対応基板をメーカーに標準搭載してもらえればDCC普及の一進に。

  2. やあさん より:

    アナログ化基板は、既にLaisDccなどから安価に出ているので、そこから供給を受ける方がコスト面でもいいかもしれません。

  3. ゆうえん・こうじ より:

    アナログ化基板でアナログ対応するにしても、まずメーカーにデコーダー用コネクターを標準搭載してもらうことが、重要ですね。

    また最近思うのは、DCCデコーダーの機能は日進月歩なので、今配線で固定してしまうと将来の故障時やグレードアップ時交換が大変だと思います。

タイトルとURLをコピーしました