Arduino UNO R4

Arduino UNO R4が発表されました。採用されたマイコンは、日本の半導体メーカーのルネサス製RA4M1です。

ラズパイピコ(RP2040)や従来のR3(ATMEGA328P)との比較になりますが、どうも分かっていない方がトンチンカンな批評をしており、争いを煽るような記事が散見されます。特徴やメリットデメリットを踏まえて正しい判断ができる情報を提供するため、UNO R3もRP2040も、RA、その他多種のマイコンを産業製品向けに15年以上扱ってきた使用経験を持つ弊社が解説していきたいと思います。

まず、ラズパイピコで使用されるRP2040との競合を指摘する方がいらっしゃいますが、RP2040と競合するものでは無いと考えます。と言うのも、RP2040はマイコンというよりはマイクロプロセッサに近い設計思想を持っています。フラッシュを内蔵せず、外付けのNORフラッシュに高速SPIでアクセスして起動する仕組みです。このため、起動に0.1秒と遅く、消費電力も比較的大きいこと、発熱もそれなりに大きい、BOMコストの点、実装面積で不利です。クロックも内蔵していますが外付けを強く推奨しているので、さらに敷地を取ります。過剰なケースが多いかもしれません。さらに周辺機能がかなり貧弱で、最小限しかありません。PIOと言う周辺機能を自分で作れる機能があり、ここでカバーすると言う思想です。かなり、思い切った仕様になっています。

SmileSoundはRP2040を採用しましたが、たまたまサウンド機能の兼ね合いでピッタリ合ったものであります。プロの目から見ると、ちょっと気になる部分も多いと言うのが実際のところです。なお、私は、分かった上でSmileSoundに採用をしています。

ESP32については、高機能版ボードには搭載されるようですが、WiFiやBluetoothのオフロードとして使用するものと思います。この使い方は、よくやる手で、安定した動作をさせるための常套手段です。M5StackなどはESPのみで完結する作りですが、マイクロ秒オーダーのリアルタイム性や機能の安定性を考えると、難しい部分が出てきます。ミリ秒でも正直キツイ部分があるとも聞きます。ESP32だけで十分な用途には良いかもしれませんが、残念ながら適用しにくい用途の方が多いでしょう。結局、マイコンを外付けすることになると思います。よって、UNO R4の構成はよく考えられたものになっていて、メイン処理はRA4M1で行い、無線LANやWEBサーバー処理などはESPにやらせると言う事になるでしょう。

ビギナーの方がよく間違えるのは、速さの定義です。マイクロ秒と言う非常に短時間を制御するのか、大量のメモリを使って複雑な演算をたくさん行うのかで、速い遅いと言う意味自体が変わります。実装する機能がどちらなのかを考えないと、的外れな指摘となります。

RA4M1は、汎用ARMマイコンとしては、珍しく使い勝手のいい5V駆動であることや、一通りの周辺機能を備えていて、万能です。家電から産業用の機器への使用にも問題ありません。品薄で値上がりも著しいATMEGA328の代替品として、順当なアップデートになるかと思います。

ATMEGA328は、タイマや周辺機能が古い設計で貧弱で、さすがに今のIoTな時代では陳腐な物になってしまいました。DIP品があって、ブレッドボードで使うには良かったですが、今は引き出し基板も容易に作れますし、今更DIPが必須かと言われるとNOとは思います。

懸念するのは、チップ単価と入手性(秋月、マウザー、デジキー)でしょう。ここはメーカーにガンバって整えていただきたいところです。本気でSTやNXPと戦うなら、ここを制覇するのは必須条件です。アマチュア、セミプロ向けに全力で取り組んでいただきたいです。

タイトルとURLをコピーしました