Webをいろいろと探検すると、DCCの突入電流は危ない!模型の寿命を縮める!等、いろいろ言われています。確かに、大きい電流が瞬間的に流れるので、寿命に少なからず影響するのは確かです。突入電流が発生するのは、トマランコンデンサのwikiで解説していますが、デコーダにコンデンサが載っていることが要因です。最初はコンデンサが空っぽなので、コンデンサを充電しようとして一気に電流が流れます。これが突入電流現象です。コンデンサが充電されると、突入電流は収まり、デコーダが消費するエネルギーの分だけ、電流が供給されます。
とはいえ、現在、実際にDCCを使われている方のほとんどは、突入電流を意識していないと思いますが、DCC普及の初期(2000年頃?)には、突入電流を十分考慮しない(マージンを持たせない)回路設計の商品があった模様で、故障などが発生していたようです。そのため、さかつう鉄道模型店さまは「線路電源は先に入れるべし」と書かれています。突入電流現象を知っている人は、ご存じと思いますが、あとから車両を置いても結局、突入電流は発生します。線路電源ONのときに突入電流が起こるのか、車両を線路に置いたときに突入電流が起こるのか、という、その違いのみです。ただし、車両を1つずつ線路に置いていくことで、デコーダ搭載車両が複数、線路上に置かれた場合に比べて、突入電流の最大値を低減できるのは事実で、それを狙っての説明と思われます。ただし、非常に面倒です。なんかの拍子で、線路電源が切れたら、また1つずつ置くのか、という話です。
そんななか、Nagodenさんがある目的のために、突入電流防止アダプタを設計されたのですが、このアダプタはいろいろなところに活用できると思っております。そこで、Nagodenさんから1台お借りしたので、ここでレビューをしていきたいと思います。
仕組みは、以下に図を示しているので、ご確認ください。
実際に効果を見てみましょう。まず、突入電流防止アダプタを使わずに、コマンドステーションと線路を直結した場合です。見にくいですが、0.1V(100mV)=1Aに換算するようにしていますので、瞬間的に2.5A近くが流れていることが分かります。
一方、突入電流防止アダプタをコマンドステーションと線路の間に繋げた場合には、1.5A弱に収まっています。おおよそ半分になっています。今回の突入電流防止アダプタでは、抵抗値を1Ωとかなり小さめにしているので、劇的には突入電流は下がっていません。とはいえ、1Ωを入れただけで半分近くに下がるわけですから、10Ω等を入れれば、より効果を増すことは事実でしょう。抵抗値を調整することで、この効果をより高めることも、弱めることもできます。使い方で、この調整方法は変わると思います。
突入電流防止アダプタの良いところは、突入電流が流れる数秒以内の時だけ抵抗を挿入し、その後はリレーで抵抗を無効化するところです。この機能によって、突入電流が発生しない通常運転時では、このアダプタは実質的に何もしないこととなり、安定したDCC運転を楽しむことができます。製品化されれば、実際に突入電流に困っている方や、予防的に安全装置として付けたい、心配性な方には朗報となることでしょう。また、抵抗を挟む事で懸念されるRailComについてですが、数秒でリレーを切り替えて抵抗経由で電流が流れなくなる動作のため、RailComへの影響はありません。
1点、注意があります。CVの読み出しや書込みを行うときには、突入電流防止アダプタを挟むと正常に動作しなくなりますので、ご注意ください。
コメント
DCCで、CV値の読み書き設定をするときにはプログラミングトラックを別にした方がよいと推奨されているのも、デコーダー突入電流の問題も関係あるのでしょうか?
プログラミングトラックを分けているのは、安全面の部分(電流を制限)や、センサの性能の面(シャント抵抗による電流検出)の2点が背景にあると私は解釈してます。
突入電流は特に関係は無いと考えます。
重連機関車のそれぞれの設定を変更するなど走行用線路でのプログラミングもありうるのですが、そのような場合にはこの突入電流防止アダプタは入れるべきなのでしょうか。
OPSモードでデコーダにCVを書き込む場合には、このアダプタを使っても特に影響は無いと思います。
前提として、突入電流で車輪が汚れるとか、故障した経験があるなど、お困りでなければ必須ではないと考えております。