鉄道模型のアナログとデジタル

日本では、鉄道模型というと、Nゲージという言葉がよく出てくると思います。鉄道模型に詳しくない人も、Nゲージという言葉は耳にしたことがあるかもしれません。2022年現在の日本は、アナログ式の鉄道模型が主流になっています。一方で、日本を除く海外では、デジタル式が主流になっています。

ほとんど多くの日本にお住いの方で、鉄道模型を楽しまれている方は、アナログ式を利用しており、デジタル式を入手する機会もなく、雑誌やよく見るインターネットサイトでも紹介されていませんので、デジタル式そのものを知らない、もしくは使う必然性は感じていらっしゃらないと思います。そんな方に、デジタル式というものがあるんだよ、ということをお伝えしたいと思います。

繰り返しになりますが、鉄道模型には、大きくアナログ式デジタル式の2種類があります。

鉄道模型を楽しまれたことがある方は、鉄道模型車両を開けると、モータやLED・電球が入っていることに気づくと思います。日本のほぼ99%の鉄道模型車両はアナログ式で発売されていますので、デジタル式に入っているコンピュータ基板(デコーダといいます)を見る事はありません。

実際に売っている車両には、モータやLEDしか入っていませんので、鉄道模型車両は、ただ走るか、ライトが光るだけとなりますが、日本のほとんど多くの方が満足されているかと思います。この楽しみ方は、走行可能な鉄道模型が誕生した100年程度前から変わっていません。日本では、走る・ライトが単純に光るだけで満足される方が多いということになります。

ここで、携帯電話についてお話したいと思います。携帯電話も、アナログ式とデジタル式の2種類があり、現在は100%デジタル式になっています。1990年代にはmova(ムーバ)、2000年代にはFOMA(フォーマ)、2020年代の現在はLTEや4G、5Gという言葉が出てきてますが、これらは全てデジタル式の携帯電話方式です。アナログ式は、movaが登場する前、ちょうど昭和のバブルの時代で使われていた方式です。今、アナログ式を使う方はいません。

携帯電話の場合には、社会インフラとしての要求が大きいことや、大規模な投資・経済市場となっていることで複雑なデジタル式となっていますが、誰でも気軽に使えるものになっています。

アナログ式とデジタル式、具体的にどう違うのかをまとめると以下です。

  • アナログ式は、線路に流れる電圧の大きさに応じて、鉄道模型車両が走ったり止まったりする。
  • デジタル式は、線路に常に電圧がかかる。電圧は、時間(数十~百マイクロ秒単位、1万分の1秒)ごとにプラスの電圧とマイナスの電圧が入れ替わることで、線路にデータ(コマンド、命令)を流しながら、電力を鉄道模型車両に送る。鉄道模型車両の中に入ったコンピュータ基板がデータを認識して、走ったり止まったり、音を出したり、ライトを光らせたりする。

できることは、間違いなく、デジタル式の方が増えます。利便性もデジタル式の方があります。メリットが多いのですが、弱点としては価格が上がってしまうこと、デジタル式の仕組みを学んで理解しないといけないこと、デジタル式に車両が対応していない場合には煩わしい改造作業が必要、ということがあります。しかし、鉄道模型車両でいろいろな遊び方がしたい場合には、デジタル式を選ぶことになります。

アナログ式で、デジタル式のような事をやろうとすれば、できないことはないのですが、制約が大きい事があります。また、デジタル式よりも複雑化してしまい、高価格になる逆転現象や、機能が制限されるケースもあります(アナログ式自動運転システムや、アナログ式サウンドシステム等)。

アナログ式で満足されていれば大いに問題は無いのですが、デジタル式に触れたことも無い場合には、知らないままになっているということがあると思います。

鉄道模型のデジタル化は、1980年代から始まりました。そして、様々なメーカーが自分の作った技術を広めようと製品を開発し、販売し、競合他社と熾烈な争いを繰り広げていました。日本のメーカーではKATO社が唯一、この競争に果敢に挑んでいました。この結果、デジタル式の技術は大きく2つの方式に収れんし、今に至っています。DCCとメルクリンデジタルの2つの方式です。しかし2020年現在、この2つの方式も併存するのではなく、DCCに収れんしつつあります。

アナログ式とデジタル式では、できることに違いがあります。たとえば携帯電話では、アナログ式は電話のみですが、デジタル式ではデータ通信機能があるため、インターネットを使ってメールをしたり、LINEなどのCHATサービスを使えたり、ビデオ通話ができたりと、様々なことができます。

鉄道模型も同じで、アナログ式では、走るかライトが光るかの機能しかありません。しかしデジタル式を使うと、サウンドや複数列車の運転、ポイントの切り替え、ライトの細かな制御、自動運転等、いろいろなことができるようになります。

アナログの良さも当然ありますが、デジタルにすることでのメリットも大きいことは事実です。つまり、海外でデジタルが普及しているのに日本に普及しないのは、日本固有の何らかの課題があるということです。それを解決できれば、日本でもデジタル化が進むといえるでしょう。

さて、その課題とは?個人的には、鉄道模型ではない理由も多分にあると思います。ユーザーの可処分所得(若者の賃金が上がらない政府の政策?)?模型メーカーがリスク回避で投資を抑制?

コメント

  1. ソーセージ より:

    課題、というよりは需要の違いではないかと思われます。

    日本の鉄道模型ユーザーとは、すなわち鉄道ファン兼コレクターなのでしょう。

    アニメ・特撮オタクの人たちが、フィギュアやプラモデルを収集するのと性質は近いという事です。

    DCCはあくまで遊び方の拡張であり、コレクション需要の受け皿ではありませんから。

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