DCCデコーダのサイズはスケールごとに、なぜ違うのか

DCCデコーダはZゲージ用、Nゲージ用、HO用、G用などと、多く分かれています。大原則として、このデコーダの対応スケールは下位互換となります。よって、サイズが許せば、極端な話、Gゲージ用のDCCデコーダはZゲージにも使っても構いません。逆に、上位互換ではありませんので、Zゲージ用デコーダをGゲージ用に使ってはいけません。ただし、メーカーやデコーダの設計マージンによっては、一つ上のスケール・ゲージにも上限付きで使用できる場合もあります。もちろん、全く設計マージンを入れていないメーカーさんも一部いますので、この限りではありません。つまり、2つ上まで動かせることは、無いと思っていただいて構いません。Zゲージ用デコーダでHO、Nゲージ用デコーダでGはあり得ない、ということです。

DCCデコーダの仕様に、「電流xxx [mA]まで」などと書かれていますので、電流はここまで流せるから、大きいゲージにも使用できると勘違いする方が稀にいますが、大間違いです。それは、あくまでも電流の話であって、ゲージが変わることによる「重量(エネルギー)」という問題を全くカバーできていません。対応するゲージの車両であれば、これくらいの電流を出せるよ、としか言っていないのです。

DCCデコーダを設計するうえで、基準となるのは、使用電圧・制御する車両の慣性(走行時の機械エネルギー)・モータ電流・デコーダの消費電流・基板サイズ等です。

なるべく安く、コンパクトに設計しますので、ターゲットとなるスケール・ゲージが決まれば、サイズも決まってきますから、その中に入るように電子部品の選定を行っていきます。つまり、サイズが小さいと、扱うエネルギーも基本的に小さくなりますので、部品の設計マージンも小さく見積もります。よって、大きなエネルギーを扱う事が、電子機器として弱くなります。

鉄道模型に使われるモータは、通常、永久磁石を使ったブラシ付モータがほぼ100%と言えます。よって、手で回して回転させると誘起電圧という現象によって、発電機のような動きをします。車体が重いほど、エネルギーが大きくなりますので、デコーダに対する要求(特にモータから返ってくる電圧上昇の影響を考慮)も厳しくなります。軽いと、デコーダへの要求は和らぎますので、その分、周辺部品をカットしたりして、安く作ろうと設計します。

つまり、使う対象の模型車両の重量や走行条件、使われ方を考慮してデコーダは設計されているので、小さいから大きい物には簡単に入りますが、大きいものを問題なく動かせるかどうかは、別問題なのです。

では、小さいゲージ用のデコーダを、大きいゲージ用に使うと何が起きるかというと、良く起きるのは、走行中にデコーダが壊れる事です。モータからのエネルギーを抑えきれずにパンクすることがあります。これは、電子部品の電圧マージンを取ってないため(小さいゲージならあり得ない動きなので当然ですが)です。そのほかには、エネルギーが大きく変動することで、内部の制御電源も変動してしまい、内部のコンピュータが暴走し、制御不能になることです。大きいゲージだと、そういう事が無いように、対策部品を入れて対処しますが、小さいゲージには不要ですし、そもそも基板に載らないので入れません。

DCCデコーダは、説明書やスペック表に記載のあるゲージ・スケールに使用しましょう。説明書に書かれていないスケール・ゲージに使ってはいけません。書いていないという事は、対応していないと考えてください。

「書いていないけど、大きい車両に入るから動くだろう」などと正常性バイアス的な判断をして、DCCデコーダが故障したとしても、それは自己責任で壊したものとなります。分かったうえで、覚悟を決めて行うのであれば、それは各自の自由ですので、自己責任で行ってください。

以上のことはDCCに限らず、アナログ運転でも全く同じです。パワーパックの選定も、スケール・ゲージを考慮して行うようにしましょう。

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