欧州のLenzが開発した、RailCom(NMRA規格ではBiDi,BiDirectionalという名称)信号を解釈し、車両のアドレスを表示する機器です。RailComは、Lenz社の欧州域内での登録商標です。
本機器は、BiDi(RailCom)に対応したコマンドステーションとデコーダを用意し、コマンドステーションと線路の間に本機器を置くことで、車両のアドレスを検出し、ディスプレイにアドレスの数字を表示できます。
なお、デジトラックス社の類似システムであるTranspondingは対応しませんので、ご注意ください。Transpondingに関する質問・技術については、弊社は一切関知しません。
特徴
RailComは、自動運転のためのキー技術となります。しかし、RailComに対応するデコーダは、すべてではありません。RailComDisplayは、RailComに対応するデコーダやコマンドステーションの動作確認に、効力を発揮します。RailComに興味のある方、今後RailComのシステムを導入する予定のある方に好適です。
- 線路上に乗っているRailCom対応車両(デコーダ)のアドレスが確認できる
- オープンソース、オープンハードなので、いろいろ弄れる
- 秋月電子のC基板互換サイズなので、秋月電子製のアクリルボードケースが簡単に手に入る
- Arduino UNOベースなので、自分で回路やソフトを改造し、RailComを使った電子工作が楽しめる
RailComに関する簡単な説明資料をPDFで用意しています。 ご興味のある方は、ご覧ください。
RailComの紹介と通信の仕組み (PDF 1MB, rev 1.2)編集
使用方法
- デコーダによってはCV設定が必要です。LokSound5の場合はデフォルトでRailComは有効です。
- J,K側をコマンドステーション、J1,K1側を線路にしてください。ただし、逆でも動作します。
- RailCom Cutout機能をコマンドステーションで有効にしてください。Railcomに対応していないコマンドステーションでは動作しません。DSair2, Z21, ECoS2などが対応しています。
- デコーダのCV29 3bit目をON(Railcom有効)にしてください。
- 同時に1デコーダからしか読み取れません。複数のRailcom対応デコーダが、同じ区間にいる場合は、認識できません。
- 並列に繋いで使用ができます。直列の場合は、動かない場合もあります。
DSair2で使用する場合には、Enable RailComCutOutを有効にしてください。 画面表示がおかしく、一度トグルする必要がある場合があります。
配線例
※ギャップは、線路と線路の間を繋がないことを示します。KATOのユニトラック線路を使用する場合には、24-816 絶縁ジョイナーを使うと便利です。
左が通常のジョイナー。右側が絶縁ジョイナーです。
HOのユニトラック線路にジョイナーを付けた状況です。
裏側。
表示の意味
RailCom信号が未検出です。 コマンドステーションの設定やRailComのサポート可否を確認してください。 | |
RailCom信号を検出しています。車両は検知していません。 | |
RailCom車両を検出(数字)しています。数字はアドレスです。 |
CVの設定
CV29のbit3は必ずONにしてください。OFFの場合は、RailcomDisplayは一切動作しません。
CV No. | CV値の設定 | 備考 |
---|---|---|
CV28 | Bit0がONの時 アドレス通知有効 Bit1がONの時 速度等のデータ配信有効 Bit2がONの時 命令への応答が有効 | Bit0を1にする(CV28=1)と良いです。 |
CV29 | Bit3がONの時 RailCom/BiDiが有効 |
RailComに対応するコマンドステーション
RailCom Cutout機能に対応したコマンドステーションが必要です。日本で多く普及しているKATO(D101,D102)、デジトラックス、バックマン、NGDCC(赤箱)や古いDesktopStation製品は対応していませんのでご注意ください。
- DesktopStation DSair2
- Roco Z21
- ESU ECoS2
- Digikeijs DR5000
RailComに対応するデコーダ
主に欧州系のデコーダが対応しています。日本やアメリカのデコーダは対応していませんのでご注意ください。なお、デコーダによっては、うまく信号が受信できない、応答が遅いなどの場合もあります。CV29 Bit3は必ずONにしてください。
オープンサウンドデータで使用しているLokSound4、LokSound5は、RailComに標準で対応しています。
ドイツ | ESU | LokSoundシリーズ, LokPilotシリーズ |
ドイツ | Lenz | SILVER mini+, Standerd V2, 10321-01 SILVER21+ |
イギリス | TCS | |
ドイツ | Uhlenbrock,PIKO | SmartDecoder 4.1 |
ドイツ | TAMS Electrik | |
オーストリア | ZIMO | MX634C |
ドイツ | Kuehn | 82770, |
ドイツ | Viessmann | マルタイ |
ドイツ | D&H | DHシリーズ,PDシリーズ |
日本 | Nagoden | Sender, |
※TRIXの車両はRailComをサポートしていないようです。
RailComに対応していないデコーダ
以下はRailComに対応したデコーダではないため、RailcomDisplayでアドレスは表示されません。しかし、RailCom通信しても、特に問題は起きないと実際に試して確認されたデコーダです。
※RailCom通信を行うと、デコーダが暴走する・おかしくなるというエビデンスはありません。しかし、DCCの本来の機能とは異なる動きとして、瞬低を1秒間に何度も実施する関係上、絶対に暴走しないというエビデンスもありません。そこで情報を集めて、RailComを安定的に利用する環境を整備しております。
Digitrax | デジトラックス社のすべてのデコーダ |
DesktopStation | DSservo (コンデンサ増強改造で不具合対策可能),DSturnout, |
SOUNDTRAXX | サウンドトラックス社のすべてのデコーダ |
Marklin | 6080, Fx Decoder, |
Nagoden | |
QSI,天賞堂 | カンタム |
Nucky | FPM Decoder, ワンコインデコーダシリーズ |
DesktopStation | DSservo, DSturnout |
回路図・アートワーク
回路図
部品表
部品No | 仕様 | 秋月部品番号 | 備考 |
---|---|---|---|
C3,C4 | 25V/47uF | P-10596 | |
C6 | 16V/100uF | P-10598 | |
7SEG | 0.56インチ 4桁7SEG OSL40562 アノードコモン | I-04422,I-03944, I-04451,I-03672, I-03954 | |
CN1,CN3 | ユーロコネクタ EG3.81 2pin |
アートワーク
編集
ファームウェア
ファームウェアはArduino IDEでコンパイルして書き込む形式です。ソースコードでの頒布です。バグを見つけた場合にはご報告ください。
rev | ダウンロードリンク | 更新日 | 更新内容 |
---|---|---|---|
rev.008 | DOWNLOAD | 2/6 | Kuehnデコーダ対策 |
rev.007 | DOWNLOAD | 1/24 | ACKの対応 |
rev.006 | DOWNLOAD | 1/23 | RailCom信号の有無の表示切替 |
rev.005 | DOWNLOAD | 1/22 | |
rev.002 | DOWNLOAD | ||
rev.001 | DOWNLOAD |
書き込み方法
RailComDisplayボードは、マイコンのブートローダは、Arduino UNO互換ボードとなります。しかし、RailComの通信が1本しかないハードウェアUARTを占有しているため、通常使用されるアップロード(USB UART)で書き込みできません。 このため、直接マイコン内部のフラッシュメモリにスケッチを書き込みする必要があります(書き込み装置経由の書き込み)。
CN4 ICSPは、AVR(Arduino UNO)のISP端子と完全ピン・形状互換です。2×3のピンヘッダをはんだ付けするか、ポゴピンの書き込み治具を使うなど、ご自身の環境に合わせて書き込みを行えるようにしてください。
Arduino NanoやUNOをベースにしたICSPライターで、書き込みできます。ボード設定は、Arduino UNOを選択し、「書き込み装置経由で書き込み」で書き込んでください。書き込み装置は、「Arduino as ISP」のみをサポートします。
ICSP書き込みは、電子工作では一般的な手法です。「Arduino ISP 書き込み」「ICSP AVR」など、検索すると、多くの情報が出てきます。
頒布
本機器は、DCCの中・上級者向けです。 RailComに対応したコントローラやデコーダを把握されている方が対象です。
サポート
デジタル鉄道模型フォーラムにて行います。
よくある質問
デジトラックスの製品は対応してますか?
対応していません。デジトラックス社は、独自のTranspondingというシステムを開発し、デコーダに搭載しています。ライセンス料が必要で、内部仕様は公開されていませんので、一切対応ができません。BiDi Displayをご使用する場合には、ESUやLenz、ZIMO等の欧州系DCCデコーダへの移行をお勧めします。
動きません!
コマンドステーション、デコーダの両方が対応している必要があります。また、BiDi機能を有効にしないと、動作しません。確認方法は、BiDi Displayを置いたとき、“-“が点滅していると、BiDi信号が来ていません。常に”-“が点灯していれば、コマンドステーションはBiDi信号をデコーダに送信しています。
デコーダ側は、CV29のbit3をONにしなければ、BiDiの機能が使用できません。
また、デコーダによっては、CV28=1としなければ、うまく動かない場合もあります(Kuehnのデコーダ等)
デコーダが暴走しました
BiDiの仕組み上、デコーダの動作に影響を与えることは無いようになっています。 トラブルの発生するデコーダの情報は、DesktopStationまで一報いただけると幸いです。その際、発生する条件を詳細に教えていただきますよう、お願いします。
全てチェックしたのにアドレスを認識しません
DSair2ではR3以前では、パワーオン直後はBiDi信号を出しません。R3.1以降はデフォルトでBiDi CutOut信号を出力します。
RailcomDisplayのバーが点滅してるときは、BiDi信号が来てません。
次にあるのは、アイドルパケットしか出てないときも、アドレスを認識できません。何でもいいので、適当なアドレスに、速度やファンクションを与えてみてください。アドレスを認識できるようになるはずです。
自動運転に使えますか?
BiDi Display自体は、自動運転には使用できません。今後、開発協力しているNagoden様やDCC電子工作連合、その他の協力者とともに自動運転用の検知器を開発する予定です。
認識しないときがある
BiDiは、基本的に走行している車両に対して認識するものです。停止中の車両を置いても認識しますが、接触が悪い場合や、通信データの内容が限定されるため、認識しにくい場合があります。
わざと、適当な速度を車両に与えることで、反応しやすくできる場合があります。
コマンドステーションが過電流で遮断される
BiDi Displayにはコンデンサが搭載されており、電源投入時に瞬間的な突入電流が流れます。1台のみであれば許容範囲内なはずですが、どうしても難しい場合には、突入電流抑制用の抵抗(10~100Ω程度)を基板の電源回路内部に取り付ける基板改造を行う必要があります。
LokSoundでBiDi(RailCom)の設定をするには?
LokProgrammerを使う方が簡単です。
動作確認済みのコマンドステーションは?
以下の通りです。2021年1月24日更新。
DesktopStation | DSair2 |
---|---|
Roco | Z21 |
ESU | ECoS2 |
動作確認済みのデコーダは?
以下の通りです。2021年1月24日更新。
D&H | DH16A |
---|---|
Lenz | Silver + mini, Standard V2 |
ESU | LokSound5 series, RailCom Transmitter Unit |
PIKO | SmartDecoder 4.1 |
ZIMO | Fleishmann向けOEM, |
Nagoden | BiDi Sender |
参考サイト・文献
- s-9.3.2_2012_12_10 NMRA RP Standard
- RailCom Data Display trains4africa
- BiDi
- DCCwiki RailCom
- Railcom compatible equipment RMweb
- Märklin BR64にRailcomトランスミッターを仕込む The Nameless City
- RailCom Display The Nameless City
- RailCom Displayを試す。 我唯足知(新・スマイラーのページ)
- Railcom(Bi-Di) Detectorの基板 Nagoden
- F28まであるコントローラ DCC出力OnOffボタン追加とRailComDisplay対応 ゲヌマ・フジガヤ2
- マニアの手から解放するTwayDCC
- RailCom サポートについて NGDCC システム構成情報
RailComの特許・ライセンスなど
RailComはEUにおける独Lenz社の商標です。2021年現在、EU域外での商標登録は無効または申請がされていません。
RailComに関連する特許(EP1380326)は、EUとアメリカで出願され有効となっていましたが、2016年7月から順次放棄され、2017年6月以降、自由に使用が可能になりました。日本では、もともとRailComに関する特許出願がされていませんでした。現在では全世界でライセンス締結不要で、自由に特許に書かれたRailCom技術の使用が可能です。
EP1380326, "Method and device for digitally controlling electrical apparatus of a model train system" 出願日 2004/01/14 ドイツでの無効日: 2017/02/01(特許維持費用の未払いによって無効) イギリスでの無効日(2017/05/31)をもって、特許の効力無効。
ただし、ESUとLenzが共同で開発したRailComPlus(RailCom+)については、該当特許などの詳細は不明ですが、その限りではありません。本ページでは、RailComPlusについては、一切技術的に抵触しないようにしております。RailComPlusに関する機能や技術は、DesktopStationやその関連組織においては一切使用しておりません。
商標 | 商標番号 | 期限 |
---|---|---|
RAILCOMPLUS | DE503020110069573 | 2031年2月28日 |
RAILCOMPLUS | WO500000001095692 | 2031年7月20日 |
RailCom | DE30116303 | 2031年3月31日 |
Webには、RailComのライセンスに関する指摘などが多く記載されていますが、ほぼすべては2016年以前に書かれたものです。特許が2016年に段階的に無効となったことが追記されていないため(欧州特許庁よりその経緯の履歴は調査可能です)であり、2021年現在、RailComのライセンスに対する指摘はナンセンスであります。
DesktopStationに、RailComの特許やライセンスについて何らかの指摘をする際には、正しい知財の知識の下、根拠となる法律・規制を明確に提示し、指摘いただきますようお願いいたします。