旧ブログにて掲載していたものを、再掲載・内容を最新にアップデートさせていただきます。
オープンサウンドデータを今月から開始していますが、「本当に電車の走行音やタイフォンに著作権は無いのか?あるのではないか?許諾を得ないとマズいのでは無いか?」などと、ご指摘を受けております。
本来、著作権を保有する方や会社がこちらに指摘するのであればごもっともなのですが、全くの無関係の方が「違反しているのではないか、きちんと問題無いことを示せ」などと一方的に指摘・追求してくることは、あまり気持ちの良いものではありません。
Youtubeや市販のビデオなどからコッソリ引っ張ってきたデータでは無く、きちんとご自分で録音したデータで作成した、全く問題の無いオープンサウンドデータではありますが、悪魔の証明のようなことを強要されるのであれば、頒布を止めてしまおうか、と思う事もありました。ただし、それはクリエイター様の多大なご協力を反故にすることにつながるわけですから、良いことではありません。
きちんと反論し、全く意味の無い指摘であることをここに明確に提示したいと考えております。もし、この内容でも私の知らない判例や、存在しないはずの著作権者が登場して裁判などになってしまった場合には、残念ですが、公開を中止させて頂きます。
本内容については、著作権法や、知見のある方のアドバイス、Webでの特許事務所や著作権団体のQ&Aを踏まえて、その指摘事項について回答して参りたいと思います。
■著作権とは?
著作権の定義をまずは法律から示したいと思います。
定義としては、「著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」であるとなっています。
著作権に該当しない物は、以下が挙げられています。
たとえば「単なるデータ」は、思想又は感情を表現したものでないから、著作物に該当しません。
また、「創作的」であることが要求されますので、他人が創作したものを模倣したものや、ありふれたものは著作物に該当しません。また、理論や法則等の「アイデア」自体は、表現を伴わないので著作物に該当しません。
また、「工業製品」は、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属しないので、著作物に該当しません。
キーワードとしては、思想又は感情を創作的に表現したもの であって、ありふれたもの、工業製品は該当しない、と言うことになると思います。
参照先: 著作権とは? 日本弁理士会
■著作隣接権
音で言うと、録音した人に与えられる権利です。音に著作権が無い場合には、録音した人に著作隣接権が与えられ、この人がたとえば、加工したりした場合には二次著作物として著作権を持つことになると解釈されるそうです。
蒸気機関車の音が著作物には該当しない例と、録音した人の権利について解説が挙げられています。
参照先: 対象が著作物でなくても著作隣接権は発生します – 栗原潔のIT弁理士日記
オープンサウンドデータの構成物
・走行音、ブレーキ音、コンプレッサ音
・タイフォン(警笛)、ミュージックホーン
・ATS音(ベル)、発車ベル、ドア開閉音、ブザー
・駅・車内アナウンス
・チャイム
走行音
走行音は明確に、特許事務所のQ&Aで、著作権を否定されています。ブレーキ音も同様と考えて良いと思われます。(走行音の中の一つであるため)
また、走行音に、著作権者の思想や感情が入っているとは、とうてい考えられません。非常に特徴的なSIEMENSのドレミファインバータも、工業製品であり音楽を演奏しているわけではない(走っているだけ)ですから、日本の著作権法で保護される範囲にはならないでしょう。
参照先: 「電車の音」に著作権?創作とは無関係なもう一つの著作権 田中特許事務所
タイフォン(警笛)
ここでは、昔ながらの空気を入れて音を出すタイプのみに言及させていただきます。と言うのも、最近はミュージックフォーンや、電子警笛が出てきており、特にミュージックフォーンはメロディを使用します。感情や思想が入っていそうに見えます。しかし、名鉄では音の商標登録も2014年頃にされましたが、特許庁から2018年3月に却下の判断が下され、商標登録は拒絶されました。ミュージックホーンであっても、チャイムと同じ扱いで、著作権法・商標でカバーされなくなったといえるでしょう。明確にJASRACに登録して楽曲として、鉄道会社に提供するなどしなければ、認められないといえるでしょう。一方、京王5000系のように、レアケースですが著作権処理を明確化された状況でミュージックホーンを製作されていますので、勝手に使用することはできません。
以前からある圧力や空気で鳴るものは、いわゆる管楽器と同じ仕組みですので、楽器と解釈し、その音自体に著作権は無いと言えると当方としては考えます。「タイフォンは楽器では無い。音自体に著作権が存在するはずだ!」と指摘される場合は、その根拠をきちんと明示してコメントください。
ATSベル音・発車ベル、ドア開閉音
ここでは、メロディではなくベルの音です。ブザーやサイレンも該当すると思います。
ちょうど、分かりやすい弁護士さんの解説が挙げられていましたので以下に引用します。
アナウンス
オリコンのサイトの解説で、アナウンスなどの定型文を話した音声について、著作権が認められないという解説があります。誰が話しても同じものになるものに、著作権が成立する創作性が担保されないため、としています。
参照先: 「ドアが閉まります」鉄道カラオケで運転士気分…車内アナウンスに著作権はあるの?
■鉄道会社や車両名等で商標権を遵守すること
JRなどの鉄道会社は、商標を登録していることが多くあります。商標の範囲が及ぶものは、使用するには商標を持つ会社の許可・許諾が必要です。
しかしながらオープンサウンドデータでは、鉄道会社名や車両の商標登録を確認したうえで、許諾が必要とならないように配慮してサウンドデータを作成しています。また、可能な範囲で、音源を、どの車両から音を録ったか明示してます。これは、Youtube等から録ったのではと言いがかりを付ける方がいらっしゃるので、出元を書かせて頂いております。
つまり、商標登録をして、その権利を阻害しないよう、全く別のものであることを明示し、一般名を使っうことで、許諾が必要とならないかたちで頒布しています。
■オープンサウンドデータのコンセプト
オープンサウンドデータのコンセプトは、以下のルールを遵守し、従来グレーやアウトだった部分を解決するようにきちんと手間暇を掛けて処理を行い、著作権クリーニングした上で無償公開することです。
・音楽は含まない(ブザーやベル、チャイムなど短い音節で、工業製品の範囲を超えないもの、著作権に該当しないものは含む)
・Youtubeや市販ビデオなどのデータを使わずにクリエイターが自分で録音した音を使用する
・サウンドの編集、LokSound向けのプログラミングは一貫してクリエイターが作成する
・クリエイターの配布許可の下、「オープンサウンドデータ」として公開する
・著作権法上で定義される著作物で、期限内の有効なものは使用しない。工業製品かつチャイム・ブザー等の、観賞用音楽となるもの・それに近いものは避ける
他の方が録音したデータを引用した瞬間に、その方の著作隣接権が発生し著作権処理が複雑化します。そこで、原則としてクリエイターが自分で録音した音のみを使用することをお願いしております。