サウンドクリエイターの方から、LokSound5とSmileSoundで、重低音の出方が違うという報告を先日受けました。そこで、条件を合わせて、デコーダから出力される音を専用の高音質レコーダで収録して比較してみました。
まず、音データに違いが無いことをLokProgrammer(LokSoundのサウンドデータ作成ツール)とDSSP(SmileSoundのサウンドデータ作成ツール)で比較しました。PC上で収録した結果を示します。スペクトル(下の部分)は大きな差が無いことが分かります。
そして、コマンドステーションはESU LokProgrammer、デコーダテスタ(LaisDccのものにスピーカーをASE02808MR-LW150-R-8Ωに改造したもの)、ACアダプタ電圧12Vを使用して、LokSound5 MTC21とSmileSound Standard MTC21で実際に再生させて比較しました。
2つの点で、大きく異なることが分かります。①500Hz付近は、SmileSoundの方が音が強く出る点と、②2kHz以上はLokSound5の方が音が強く出る点です。
①500Hz付近は、SmileSoundの方が音が強く出る
SmileSoundでは、フィルタやイコライザ等の処理は一切行っておらず、純粋に音データの合成やつなぎ処理を実装しているのみです。LokSound5では、低域が弱く出ているように見えるため、何らかの意図的にHPFをかけている可能性があります。低域を強くしても、それを出力できるスピーカーは意外と多くないので、それを見越して低域を落としていることが考えられます。
この方法では、特にディーゼルなどの低域が強いサウンドについては物足りなさを感じてしまうかもしれません。しかし、Nゲージなどの小型なスピーカーでは再生ができないので、割り切っている点については、理解できます。
②2kHz以上はLokSound5の方が音が強く出る
これは、①で指摘した低域除去の代わりに、高音域の音を増強して、低域を補うように設計している可能性があると思われます。同じデータにもかかわらずかなり過剰に音が上がっていますが、多くのスピーカーの場合、人間の可聴域である8kHz付近まではしっかり出ます。また、ESU LokSound5のサンプリング周波数は31.25kHzなので、サンプリング定理によってその半分の周波数である16kHz弱までスペクトルが強調されていることから、意図的に高音域を強化していることが推察されます。
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結論としては、LokSound5は今までノウハウを踏まえて積極的に音の出方の調整をしているということが分かりました。一方、弊社のSmileSoundは、味付けは特に行わずに、素直な音作りとする設計指針としておりますので、ユーザーの設定したままをそのまま出力する形を取っていきます。
どちらが良い、悪いというのはありません。皆様のお好みに合わせて、サウンドデコーダを選んでいただければと思います。