昨年、KATOのHO EF81のDCCサウンド化についての記事を公開しました。EF81は入手性もよく、価格も2万円を切るなど安価で、さらに作りも非常に素晴らしと三拍子整っています。さらにさらに、DCCサウンド化の改造ハードルも、他のメーカーの機関車と比べればかなり低いほう(とはいえ少々時間は掛かりますが)であります。2020年にくみ上げてから、ライトユニット基板のアップデートもあったり、MTC21で使うノウハウもたまりましたので、内容を見直したものをここでご紹介させていただきます。
・KATO HO EF81のページ
・オープンサウンドデータEF81のページ
・DCCサウンド化のためのライトユニット基板(10031)のwikiと頒布ページ
・ESUのLokSound5 micro Next18(+10023 ExpBoard General HO)か、LokSound5 MTC21 (入手ルートは国内の模型店、もしくは海外模型店からの輸入)
ここでご紹介するのは、KATO HO EF81をフルDCC化します。フルDCCとは、サウンド以外に、テールライトの4つをAUX1,2,3,4に割り当てて、入換灯、テールライトを完全に再現するものであります。機回しで遊ぶには必須の機能。しかしアナログだと、わざわざ屋根を外してスイッチを切り替える手間があり、これはいただけません。しかしDCCなら、コマンドステーションからボタン操作で簡単に切り替えできるのです。もう、このためだけでもDCC化をお勧めしたいところです。
実際の遊んでいる様子は以下の通りです。本記事を実践することで、こんなことができるようになります。
本記事を試してみるにあたり、必要な部材を以下に示します。はんだごてやドライバー、ニッパなどの電子工作に必要な最低限の工具は既にお持ちであるという前提としております。必要に応じて別途お買い求めください。また、DCCデコーダを搭載した経験があり、LokSound5も使い慣れている方を対象としています。初めての方は、相談できる身近な方のアドバイスを受けられるようにしてください。トラブルがあっても、DesktopStationは一切のサポートや故障・損傷時の補償などはいたしません。デジタル鉄道模型フォーラムは自由にご利用いただけますが、確実に解決することを保証するものでもありません。
- ESU LokSound5 サウンドデコーダ(ESUデコーダ型番 58429,58419,58420,58410,58813,58818,58823,58828のいずれか、詳細は後述)
- 10031 ライトユニット基板
- 10027 YP用電子部品
- スピーカー (CES-26138-16L030が音量も大きく、小型でお勧め)
- AWG32程度の電線 数メートル分
- 絶縁テープ(アセテートテープを推奨。ビニールテープはベトベトして耐久性に難があるため非推奨。)
- マスキングテープ(仮固定用、なくてもよい)
作業を始める前に、KATOが公開しているBluetoothスピーカーモジュールの搭載方法の動画を確認下さい。基本的には、この搭載方法を途中まで行います。分解の仕方を参考としてください。
実際にDCCサウンド化していくにあたって、大きな作業項目は以下の通りとなります。順に説明していきます。
- ライトユニット基板10031に抵抗とLED、(G3のIC1)をはんだ付けしておく
- EF81のダイキャストボディにデコーダ配線を通す加工を行う一部を切り取る)、少し彫り込む(MTC21デコーダを使用する場合)、デコーダポケットを絶縁する
- モータ付台車からモーター配線を引き出して延長する(10-20cmくらい)
- モータ配線をライトユニット基板10031に配線する
- デコーダとライトユニット基板10031を配線する
- スピーカーをスピーカーポケット(モータ付台車の上の空間)に置いて、デコーダに配線する。1つでも良いが、2つ付けるときは直列・並列にするかはスピーカーのインピーダンスによって決めること。位相にも注意。
- オープンサウンドデータをLokSoundデコーダに書き込む(最初でもよい)
当方が作成・頒布している、DCC化を容易にするライトユニット基板10031の内容物は以下の通りです。
説明書は、以下のようになっています。使用するデコーダの種類に応じて、配線が少々変わります。DesktopStationとしては、LokSound5 microを使う事はあまりお勧めしません。Nゲージ向けのデコーダなので、EF81のようなダイキャストで重量のある機関車に使うには、少々心もとないところがあるためです。どうしても使う場合には、Nagodenさんの#9909トマランコンデンサをU+(COM+)とGNDに繋げることを検討してください。トマランコンデンサは集電不良用ではなく、モータの逆起電力を吸収させてデコーダの故障につながる過電圧となることを防ぐために使用します。
- (1) 58429,58419 :LokSound5 (DCC) MTC21を使う
- (2) 58420,58410: LokSound5 (DCC) NEM652、またはLokSound5 MTC21のピンに直接はんだ付けする
- (3) 58813,58818,58823,58828: LokSound5 (DCC) microを使う
(1)と(3)の場合は、10031基板のIC1には別売の10027 YP用電子部品に含まれているG3と印字されたICをはんだ付けします。(2)の場合は、以下の図のようにIC1(G3と書かれたところ)のパッドに電線を使ってジャンパ(ショート)させます。
半田付けの方法は、インターネットを検索していただければたくさん出てきます。上達するには、とにかく数をこなすしかないというところであります。表にLED2か所、抵抗6か所、裏にLED4か所をはんだ付けします。LEDは、非常に小さく、熱に弱いのではんだ付けは手早く正確に行う必要があります。LEDをもしダメにしてしまった場合は、草心デジタルから個別購入ができます。秋月電子からも、ピンの長さが非常に短いですが、類似品があります。
はんだ付けが終わったら、モータ内蔵台車(いわゆるパワトラ)を外して、配線を引き出します。こちらは依然と特に変わりません。
ダイキャストにあるデコーダのスペースとライト基板の間の配線を取出せるように、カットします。
ダイキャストをカットできました。
また、MTC21デコーダのように少し深さが必要なデコーダを用いる場合は、ダイキャストのポケットを少し掘って、深さを確保してください。そのあと、絶縁テープ等でダイキャストとデコーダが接触しないようにします。デコーダが熱収縮チューブで絶縁されている場合でも、念のため行っておくと良いです。というのも、配線のはんだ付けをしたときに接触してしまうケースもあるためです。
次に、モータ付き台車の改造になります。モータから配線を取り出します。このモータ台車は、EF510系やE5系などでも使われていて、非常にボディから取れやすいので加工も注意が必要です。
配線を継いでいきます。このとき、モータの上側の灰色(グレー)のプラ部品のところに電線を固定させておくと良いです。というのも、このモータ配線は、カーブで首振りするときに動くので、なるべく可動部分(真ん中の黒い部分)に近いところまで配線を持ってくると、配線の首振りによる移動範囲は狭くなり、ストレスのかかり方が緩和されます。ちょっとした工夫と細工で、模型車両を末永く使用できますので、面倒くさがらずに丁寧に作業していきましょう。DCCのトラブルの要因や発生頻度は、作業の雑さ・丁寧さの違いで変わってきます。
プラスチックの固定部とダイキャストボディにモータ付台車を取り付けて確認します。配線を噛んだりストレスがかからないかを確認してください。
ダイキャストボディも取付けて配線を引き出すと、以下のようになると思います。ポイントとなるのは、赤の矢印で示した通り、ダイキャストボディの真ん中の隙間を通すことです。なぜこんなことをするかというと、配線を上に通すと、ライトの導光板と干渉するためです。このため、電線はAWG32など細いものを使わざるを得ません。また、ライトユニット基板10031のサイド(側面)から配線を引き出すようにしてください。LEDと配線が当たって、テールライトの点灯に支障が無いようにするためです。
モータ配線は、10031基板のモータ用パッドにはんだ付けしてしまいましょう。デコーダに配線しても構いませんが、10031ライトユニット基板にいったんはんだ付けした方が、スムーズに作業を進められると思います。この際、モータ配線は可動部分を通ってきますので、少し長めにして、カーブ通過などの際にモータ配線にストレスが掛からないようにしましょう。
この後は、デコーダの配線です。MTC21を使うか、NEM652で配線するか、Next18(LokSound5 micro)でするかはお任せですが、微妙に異なるのでご注意ください。以下は、MTC21のESU 58429 LokSound5 DCCを使って、MTC21を使わずに直接はんだ付けしている様子です。実質的にNEM652版(ESU 58410または58420)と同じ配線方法です。
配線が大変ですが、はんだ付けを進めていきます。スピーカーも忘れずに配線しておきましょう。お気軽にスピーカーを選びたい方は、CES-26138-16L030をお勧めします。1つでも十分に大きな音が出せると個人的に思ってます。ただし、重低音をもっと増やしたい場合は、先人のノウハウを活用いただければと思います。当方が配線したものは以下の通りです。
まとめとなります。ちょっと大変ではありますが、KATO HO EF81はダイキャストボディの大改造が不要、デコーダポケット・スピーカーポケットが最初から用意されていて、DCCサウンドを意識した設計となっていることがよくわかります。大きな作業に見えてしまうかもしれませんが、今までいろいろな機関車を改造した中では、ハードルは非常に低いレベルです。ダイキャスト部分と、テールライトの制御の部分をきちんと考慮していることが、ポイントです。
もし、HO・16番機関車のDCCサウンドに興味のある方は、KATO HO EF81はぜひともチャレンジしていただきたい模型車両です。サウンドは、ぜひともオープンサウンドデータを活用していただければ幸いです。