モータの設定
SmileSoundは、2種類のモータ制御機能を有しています。
- OpenLoopモード (単純なモータ制御)
- BEMFを用いたPI制御モード (坂道でも速度一定)
SmileSoundのデフォルトは、PI制御モードになっています。
また、これらの制御機能に、低速が不得意なブラシ付DCモータで低速運転が可能な電圧キック機能を組み合わせることで、安定したモータ制御を行うことができます。
モータに指示する速度指令値は、以下の3種類の方法を用意しています。通常は、リアルなスピードを再現できる、スピードカーブを用いることを推奨します。
モータの種類別かんたん設定機能
車両の車輪、台車、ギア、モータの構造・特性によって、CV設定は大きく変わります。このため、ユーザーは微調整を行う必要があり、非常に煩雑でした。
DSSPには、車両メーカー・スケール・車両カテゴリに合わせたモータ設定ファイルで、簡単に設定を行える機能をご用意しています。モータ設定ファイルはユーザー有志の提供によるものとなります。もし、ファイルのない車種で、調整をしましたら、ぜひとも寄贈を頂けると幸いです。
操作方法は、ツールメニューから「既存のモータ設定ファイル一覧から選択」を選ぶと、別画面が表示されます。
別画面の「モータ設定ファイル選択」には、DSSPに予め備わっているモータ設定ファイルから、自由に設定ファイルを選択できます。このファイルは、自分で追加することもできます。
パラメータ
CV番号 | 説明 |
CV29 | 4bit目でスピードカーブの有効無効設定を行います。 |
---|---|
CV2 | スタート電圧 |
CV3 | 停止状態から最高速度に上がるまでの加速時間。サウンドデータごとに異なります。0.6で割るとsec(秒)になります。 |
CV4 | 最高速度から停止状態に下がるまでの減速時間。サウンドデータごとに異なります。0.6で割るとsec(秒)になります。 |
CV5 | 最大電圧 |
CV6 | 中間電圧 |
CV9 | PWMキャリア |
CV67-94 | スピードカーブ ←数が多いので、CV67とCV94が分かればOKです |
CV10 | BEMF cutoff(無効にする最低速度値。いわゆるオフセット。) |
CV54 | BEMF係数。16で1.0。64で64/16=4.0倍。PI制御しているときのみだが、値を大きくすると、最高速度は遅くなる。モータごとに適切な値があるので注意。Nゲージ車両だと64-128あたり。 |
CV55 | BEMF PI制御モード Pゲイン |
CV56 | BEMF PI制御モード Iゲイン |
CV64 | キック上限速度 |
CV65 | キック電圧 |
参考例
CV番号 | Nゲージ汎用 | GM コアレス | HO プラ機関車 |
線路電圧 | 12V | 12V | 15V |
CV2 | 8~30 | 8 | 16 |
---|---|---|---|
CV10 | 2 | 2 | 2 |
CV54 | 旧国電 128, 特急 64, 新幹線 32 | 旧国電 128, 特急 64, 新幹線 32 | 28 |
CV55 | 16※1 | 16 | 16 |
CV56 | 32※1 | 32 | 32 |
CV64 | 0 | 0 | 0 |
CV65 | 0 | 0 | 0 |
※1 一旦減速するような挙動をした場合は、CV55,CV56を8と16のような小さい値に変えて試してみてください。CV=2も25や30のような大きな値の方が起動がスムーズになる可能性があります。
モータに速度を命令するときに使う機能
コマンドステーションから、デコーダを経由してモータの速度を反映するとき、モータの特性に合わせて調整を行うことができます。以下の3つの調整機能のうち、どれかが必ず使用されますので、モータの動きを調整したい場合には正しく設定しましょう。
特にスケールスピードを決める場合には、影響があります。
単純2点
CV2 スタート電圧とCV5 最大電圧を用いた単純線形による速度指令値を生成します。
このとき、CV6が0であることが本機能の発動条件です。オープンサウンドデータのデフォルトでは、後述の3点補完が使用されます。
3点線形補完
CV2 スタート電圧とCV5 最大電圧、CV6 中間電圧を用いた3点補間による速度指令値を生成します。
28step スピードカーブ
CV29で、Complex Speed CurveがONになっていると、使用できます。OFFの場合は、単純2点か、3点線形補完が自動で選択されます。
CV67-94 スピードカーブを用いて、速度指令値を決めます。
なお、CV67-94は、CV2とCV5のスタート電圧・最大電圧のパラメータを使って上下限値は補正されます。
モータ制御方式
OpenLoop
BEMFがうまく動作しないモータを使う場合、OpenLoopモードを使用してください。以下のBEMFに関わるCVを0に設定する事で、OpenLoopモードでモータ制御を行います。
OpenLoop&3点補間
- CV10を0に設定する
- CV54を0に設定する
- CV29の4bit目を0にする
- CV2に適正なスタート電圧(0-255)を入れる。20-40程度が最適値。
- CV5 最大電圧(0-255)で、最高速度相当にする値を設定する。車両のスケールスピードにもよるが、150-250程度。
- CV6 中間電圧(0-255)。(スタート電圧+最大電圧)/2程度の値を入れる。少し小さくすると、低速の割合が増えて実感的となる。
OpenLoop&スピードカーブ
OpenLoopの制御で、スピードの上昇をCV67-94のスピードカーブを使って制御する方法です。
- CV10を0に設定する
- CV54を0に設定する
- CV29の4bit目を1にする
- CV2に適正なスタート電圧(0-255)を入れる。20-40程度が最適値。
- CV5 最大電圧(0-255)で、最高速度相当にする値を設定する。車両のスケールスピードにもよるが、150-250程度。
- CV67-94 スピードカーブ。28段階のスピードの上がり方を決めるカーブを設定する。0-255の値を設定する。
Aのパラメータの解説
0のときは電圧なし、15の時は、100%がフル電圧としたときに、25%を与えることになります。8のときは、12.5%となります。
Bのパラメータの解説
1dは20msに相当します。つまり、15を指定すると、300ms周期でキック電圧を与えます。0で常時キック電圧を加算となります。
BEMFを用いたPI制御
坂道でも安定したスピードを実現できる、BEMF(モータの誘起電圧)を速度検出値として用いたPI制御機能です。
使用するCVは以下となります。
- CV10 BEMF cutoff(無効にする最低速度値。いわゆるオフセット。)
- CV54 BEMF係数。16で1.0。64で64/16=4.0倍。大きくすると、最高速度は遅くなる。
- CV55 PI制御のP項
- CV56 PI制御のI項
CV10 BEMF cutoff係数
BEMFを検出する際に、検出した値(速度)の下限値を決めるものです。
BEMFは通常、数%のオフセットを持っているため、このオフセット+αを無視するように調整しないと、低速がうまく回せません。
数%程度の値を入れるので、通常はCV10=8~16 程度を入れてください。割合でいうと3~6%となります。
CV54 BEMF係数
BEMFの検出電圧と速度を一致させるための係数で、値を小さくすると速度が出やすくなります。小さくしすぎると、飽和してうまく制御ができなくなるため、通常は2~5倍程度の値で調整をしていきます。
CV54=32~90の値を入れてください。モータによって、値は異なります。
CV118 BEMF 計測ギャップ
BEMFを検出するときに、計測するタイミングを調整します。モータの種類によっては、この計測ギャップを大きく設定しないと、正しく速度を検出できない場合があります。
加速時間・減速時間(CV3,CV4)
SmileSoundでは、サウンド同調を前提とした設計となっているため、サウンドデータで表現されているサウンドの加速時の再生時間と、モータの加速時間・減速時間を正しく設定する必要があります。
CV3及びCV4に設定する値は、0.6で割ると秒[sec]に換算できます。たとえば、CV3=100とすると、加速時間は100/0.6=166.67秒となります。
サウンドデータで設定されている加速時間・減速時間は基本的に、変更を推奨しません。変更する場合には、サウンドデータの中身を理解し、問題がないことを確認してから行ってください。弊社に問い合わせを頂いても、ご相談への回答はお答えいたしかねます。
なお、蒸気機関車サウンドデータのCV3・CV4と、電気機関車・吊掛電車サウンドデータのCV4については、±50%程度を目安として微調整を行うことが可能です。その他のサウンドデータは原則として変更不可とお考えください。
モータ制御機能を補佐する機能
パルスアシスト機能
モノが動き出すときに静止摩擦という現象が発生するため、パルスアシスト機能は、この静止摩擦の影響を低減するための機能です。静止摩擦があるため、車両の走り始めが渋くなるケースが必ず発生します。パルスアシスト機能は、静止摩擦の影響を小さくするように、モータにかかるパワーを少しだけブーストする役目があります。モータや車両の重さに応じて、大きすぎず、小さすぎずの絶妙な値の設定が必要になります。
パルスアシスト機能を使用しない場合、CV64=0,CV65=0としてください。
パルスアシスト機能を適用する際は、まずはじめに初期値としてCV64=15,CV65=205を設定します。その後、CV64を下げる(上げる)方向で、走らせながら試していただくと良いかと思います。
目標はSpeedStep1 (一番最小の走る速度)において、最低速度※の1/2~2/3程度になる速度です。
※アシスト無し時で減速時に止まる直前の速度
下の図を説明します。一番左の時間(msはミリ秒)は、パルスアシスト機能を動かす時間です。パルスアシスト機能は、一瞬だけ動かしますが、その一瞬を微調整できます。デフォルトはCV64=15としていますので、パルスアシストの時間は15msで「通常」の設定となります。パルスアシストの時間を長くすると、飛び出している時間が長くなります。モータの仕様によって、長めにしないと走り始めない場合がありますので、後述のCV65だけでは足りない場合は、CV64の時間を少しずつ大きくしてみてください。
CV65は、パルスアシストする力の度合いで、205を標準としていますので、Dutyが40%となります。CV65の値を小さくすると、パルスアシストする力が小さくなります。車両が飛び出す場合には、CV65を小さくすると、飛び出しが収まりますので、ちょうどよい下限を見つけてください。
DSSPで設定することもできます。パルスアシストの設定項目が3つ用意されています。
パルスアシスト調整は、左側の表の横方向の-3~0~+3の調整項目が該当します。
PWMキャリア機能(CV9)
PWMキャリア周波数を設定できます。CV9に設定できる値は以下の通りです。
コアレスモーターなどを使用する場合には、PWMキャリア周波数を16kHz以上に高く設定する方が良いといわれています。
ご使用されるモータの種類に応じて、PWMキャリア周波数は適切に変更してください。
PWMキャリア周波数が高い(10kHz以上)と、より滑らかな動きとなります。一方、低速時はパワーが出にくい傾向があります。
PWMキャリア周波数が低い(10kHz未満)と、低速時はパワーを出しやすくなります。一方、低速時はガクガクとしやすい傾向があります。特に8kHz以下では、キーンという音が気になる場合があります。
CV9設定値 | 対応するPWMキャリア周波数 |
0 | 32kHz |
1 | 24kHz |
2 | 16kHz |
3 | 12kHz |
4 | 10kHz |
5 | 8kHz |
6 | 6kHz |
7 | 4kHz |
8 | 2kHz |
9 | 1kHz |
10 | 500Hz |
11 | 250Hz |
12 | 130Hz |